ネット風評被害対策のすゝめ その4

あおのです。
昨今、9月病なるものが流行っているそうで、夏の猛暑に疲れ、またお盆休みなどで気が抜けると、9月は仕事をしたくなくなるのだそうです。
個人的には、この病気はすべての月に存在しているような気がします(笑)。

さて、前回までに、掲示板に書かれた書き込みを削除し、ちょっと苦労したけど書いた人を突き止めることができたわけです。
そうすると、被害を受けた企業は、投稿者に対してどう対処することができるのか、という点が問題になります。
なお、対策としてどうあるべきか(事前対策や事後対策など)については、また項を改めます。

書き込みをした人が特定できた場合、方向性としては、民事と刑事の二つのルートから責任追及をすることが考えられます。

まず、考えられるのは民事責任の追求です。
損害賠償の金額は、個人の場合であれば、どんなサイトにどんな内容を書いたのかなどで決まるので一概には言えません。
慰謝料というのは目にめえない精神的な苦痛に対する評価ですから、かなり幅のある概念です(感覚的には100万円から300万円の範囲が多いように思いますが、これはかなりケースバイケースです)。
一方、企業が被害者の場合、同じく企業ブランドの毀損や評判が落ちたなどの被害は金銭的な被害に換算しにくい面があります。
しかし、商品についての風評被害の場合で劇的な売上に減少が生じたり、ある店舗に関して虚偽の事実を投稿して中傷した場合などは店舗の営業成績の低下が生じることがあり、数字などの直接的な形で損害が明確になることもあります。
このような場合には、風評によって損なわれた金銭的被害が賠償額に反映されて請求されることも多く、金銭評価がしにくい風評被害の損害賠償のケースと比べるとケタ違いになることもあります。
もちろん、風評被害があったことと会社の売上の影響などの金銭的被害との間の因果関係は、証明するためのハードルは決して低くはありません。
また名誉が毀損された場合などでは、特に加害者が企業などのケースでは謝罪広告の掲載や記者会見による謝罪を求めることもあります。
これらの民事責任の追及は、訴訟による場合もあれば、任意に交渉を行って結果を得られる場合もあります。

次に、刑事責任としては、まずは投稿者に対する名誉毀損(刑法230条)があります。
あまり逮捕・起訴されることは少ないですが、警察が捜査に動いただけでもそれなりの抑止力になります。
この罪は、三年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金です。
起訴されることが少ないのはもちろん、実刑になるケースは更に少ないのですが、極めて悪質な場合や執拗な場合などで被害が大きかったり、他の犯罪の経歴があったりするとそれなりに可能性が上がります。
また、被害者が会社であれば、虚偽の風評によって会社の業務が妨害されたとして業務妨害罪など問題になります。
刑事責任の追及する場合は、あくまで警察・検察による捜査や起訴を求めていくしか手段がありません。
よって、そのようなケースでは、被害届の提出だけでなく、獲得している証拠などを付して刑事告訴を行い、また捜査の進捗を確認するなどして、刑事責任の追及がきちんと行われるよう、警察・検察の活動を促すことが重要となります。

おまけとして、許認可事業などでライバル会社からの中傷である場合には、公になると許認可の取り消しがなされることもあります。
指名競争入札の指名業者から外された、なんてケースも聞いたことがあります。

これらの選択肢のいずれを取るか(またはいずれも取るか)は、風評被害にどう対応するのか、という企業の危機管理の方針によります。
次回は、逆に加害者とならないためにはどうしたら良いのかという点も含め、ネットの風評被害に関する危機管理について触れたいと思います。

では、また次回!
弁護士 青野博晃